はじめかた

不登校をきっかけにしたホームベースドエデュケーションの場合

 日本の場合、不登校をきっかけにホームベースドエデュケーションを始める家庭が多くあります。その場合、お子さんの状態を十分尊重して進めることが大切です。最近は不登校についての理解が広がってきたというものの、不登校をしている子どもは大きなプレッシャーを受けていることが少なくありません。「学校に行くのは当然」という空気を吸って育って、いざ自分が学校に行けないという経験をした時にすんなり学校に行っていない自分を受け入れることは難しいものです。家族や先生が「学校に行きなさい」と言わなくても、あるいは「家にいていい」と言われても気持ちが休まらないことはよくあります。みんなは学校に行っているのに、行けない自分は弱いのではないかとか、これからどうなってしまうのだろうとか、学校に行っていない今の自分を受け止めにくいことは多いのです。

 そんな時に、「不登校してもいいよ、それならホームベースドエデュケーションを始めましょう」と言っても、気持ちがついてこないということがよくあります。学校に行っていない自分を良くないと感じて、自分を否定するような気持ち強い時は、まず休んで否定感が薄くなってきて何かに取り組みやすくなるタイミングを待つことも大切な場合があります。

社会の資源を活用して

 ホームベースドエデュケーションというと、家の中だけというイメージを持たれることも少なくありません。しかし、家を基盤ということは家だけという意味ではありません。日本の学校教育が殆ど学校の中だけで完結しているので、家を中心とした学びというと家で殆ど完結するイメージにつながるのでしょうか。

 各地域にある図書館は非常に活用の可能性を秘めた社会資源です。ただたくさん本があるだけではありません。ニュージーランドのホームエデュケーション家庭の子は、ほとんど毎日図書館に通っていました。図書館には子ども向けの本だけでも数えきれないくらいあります。ちょっと見るだけで飽きたとしても、買ってあげた本だと親としては不満になりがちかもしれません。図書館の本ではそんなこともありません。また、司書にいろいろ相談すると、その子の知りたいことの出ている本、その子が興味を持ちそうな本などを薦めてくれたりします。他にも図書館では朗読会、紙芝居などの企画もあったり、館によっては演奏会、落語会、講演会、天体観測会などの行事も組まれていたりします。本以外でもCD、DVDなどの視聴覚資料も貸し出ししているところが少なくありません。

 公立の公民館、体育館なども使い出があります。公民館などでは手話教室、マジック教室などに参加することもできますし、サークルが定期利用していていることが多いですから、サークルにつながる可能性もあります。体育館も卓球やバドミントン、水泳を楽しむのはもちろん、ヨガや薙刀などの実技を学ぶことも可能なことがよくあります。こういった公的な施設は費用が掛からなかったり、かかっても低額だったりします。

 県庁所在地のような大きな都市にはもっと活用できる公的施設があります。美術館、博物館、動物園、水族館、天文台、資料館、研究所などです。美術館、博物館、動物園、水族館などは来訪しての活用が前提の場所です。もちろんそのように楽しむことができます。でも、それだけではなく、館内ツアー、講演会、イベントなど最近は様々な催し物があり、単に訪問して楽しむだけではない活用ができます。定期的な講座を企画しているところには、子ども向けの企画をしているところもあります。市民会館などには定期的に利用しているオーケストラ、合唱団などがあり、参加することが可能です。「夜の水族館」などの夏休みなど限られた期間限定イベントもありますね。

 民間でも劇場、ギャラリー、映画館などはいろんな情報や機会が得られるところです。専門性のある店も活用できます。書店、文房具店、画材店、DIYショップ、プラモデル屋などには意欲的なお店があり、イベントやワークショップなどを開いているところがあります。映画館などには会員制度があり、安く利用ができるだけでなく、映画を見て意見交換をするなどの交流ができるところもあります。

さらに、欧米ではホームベースドエデュケーション家庭同士のネットワークがあります。ラーニングセンターは個々の家庭でそろえるのが難しいような天体望遠鏡、3Dプリンター、陶芸のろくろや窯、科学の実験設備などを備えていて、ラーニングセンターに行って使ったり、ものによっては貸し出しをしてもらえたり、講習を受けられたりという場です。サポートプログラムは個別の家庭のホームエデュケーションの相談に乗ったり、様々な資源を紹介したりアドバイスをしてくれたりするものです。

家庭へのサポートとラーニングセンター

お子さんのホームエデュケーションをどのように進めるのか、お子さん本人、親の方とこちらの担当者でプランを立てるなど、全般的なサポートを行います。不登校がきっかけでホームベースドエデュケーションを始めることが多いですから、学校の対応や、日常生活の悩みなど不登校の悩みにも対応しつつ、必要な場合休む時期を取るということも含めつつ、お子さんにあった学びの在り方をつくっていきます。

お子さんの興味・関心はどのようなところにあるのか、家庭にはどのような資源があるのか、近所やアクセスしやすい資源にはどのようなもの、人があるのかなどを把握しながら、学びの素材ややり方をお子さんに合った、家庭に負担の少ないやり方を探していきます。

必要に応じて、不登校等を経験した若者サポーターに入ってもらって、お子さんの遊びや学びの環境を豊かにすることも可能です。

440Hzにはホームベースドエデュケーションのラーニングセンター機能もあります。ご家庭では揃えづらいような業務用3Dプリンター、双眼顕微鏡、動画の撮影機材一式などがあります。関心のあるお子さんが個別で講習も含め使うことができたり、希望に応じてホームベースドエデュケーション家庭の子ども同士でグループワークをしたりすることも可能です。

定期的に親の例会も開いており、それぞれの家庭の様子を紹介しあったり、悩みを出し合ったりすることができます。他の家庭がどのようにしているのかを知ることは、参考にもなり、自分たちだけではないという安心感にもつながります。もちろん、親の個別相談も可能です。